当たり前の存在だった、
そんなあなたとの別れは突然訪れた。
出会いは何気ない気持ちで
近所のパン屋さんに入ったあの日。
もうずいぶん前のことだ。
いつも窓際にいたあなた。
なんとなく視線を感じて
私も少しあなたの方を
見ることはあっても
特に何という事もなく
時は過ぎていった。
そしてある日、
普段と変わらぬそのパン屋で
店員さんがこう話しかけて来た。
「うち、閉店するんです。」
驚きとともに悲しみが襲った。
悲しいというか、
寂しいというか。
・・・・・・
それからというもの
毎日のお弁当をやめて
そのパン屋に通った。
炭水化物?
そんなの気にしない。
私は同じお店で
いつも同じものを頼む性格なので
毎日毎日、
大好きな目玉焼きトーストと
チョコチップロールを頼んだ。
そうして毎日通うようになって、
あなたに会う機会も増えた。
でもやっぱり
何があるわけでもなかった。
そしてついに
閉店の日が来た。
涙もろい私は
こらえるのに必死だった。
お店に入ると
そこにいつものトーストと
ロールはなかった。
店員さんが言った。
「いつものがなくてすみません、
今日は朝から大勢来てくださって・・・」
最後に手に取ったのは
レーズンパン。
最後の日なのに、初めましてだね。
レジではこれ以上話すと涙が出るからと
「美味しかったです、
ありがとうございました」
それだけ言って出口へ向かった。
去った後にふと気付いた。
その日は
あなたの姿もなかったんだ。
当たり前のように
毎日そこにいたのに。
最後の日だけ
顔を見せないなんて。
でもあなたもきっと
売れてしまったんだね、
窓際の揚げカレーパン。
結局あなたの良さを知ることなく
あなたは幻の存在となってしまった。
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先日、ご夫婦で営業されていた
近所のパン屋さんが閉店しました。
その悲しみをどこにぶつけたら・・・
カレーパンへの未練は・・・
そうだ、ブログに書こう。
(どうしたらそんな発想になるのか
こちらが知りとうございます)
ということで、犬のお姉さんは
少し寂しい気持ちで
残りわずかな今年の時間を
過ごすのでした。