2016年
茨城県動物指導センター訪問
     
ここは茨城県唯一の行政の施設。当時の愛護推進課、森島啓子課長にお話を伺う。
     
丁寧に見学者用に作られた資料で茨城県の状況説明・施設の説明後、施設を案内していただいた。他府県では “中核市”や“指定都市”など、動物収容所が県以外の施設と分けられている事が多い。しかし茨城県ではこのセンター1カ所に、県全体で保護された犬や猫たちが集まる。お話を伺うと、動物好きの職員の皆さんが一匹でも多く助けたいという気持ちが感じられ、説明も的確で、誠実に取り組む姿勢が印象的だった。

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飼い主による持込みで一番多いのは、高齢者が一人暮らしのため世話ができない、老人施設に連れていけない、亡くなった、という理由。放棄された動物にセカンドチャンスを与える場=セイフティーネットの必要性を感じる。日本は「アニマルセラピー」のボランティア活動が、ようやく社会的にも認められるようになったばかり。ペットと一緒に暮らせる老人施設はまだまだ少ないという現状。ペット先進国ともいえるドイツの場合、動物を受け入れている老人施設は約25%にものぼる。今、飼い主もペットも幸せになる老人ホームが求められている。(第2回マインシャツツシンポジュウム「ペットと老後を考える~ドイツに学ぶともに老いる”豊かな暮らし”」より)

過去の収容数を見ると、平成26年度に収容された犬は2,568匹、猫が2,505匹とほぼ同数である。これは今まで多かった犬の収容数が大幅に減少、少しずつ下がっている猫の収容数に近付いたためだそう。参考までに、平成25年度は犬が3,042匹、猫が2,880匹であった。(環境省調べ)
元々茨城県に犬が多いのは、平地で放し飼いが多く野良犬が増えやすいから。そして海沿いは餌も豊富という「野良犬が生きやすい環境」が、原因の一つと考えられる。捨てられる犬を減らすため、よく考えてから飼うよう呼びかけている。
     
猫に関しては、野良猫が増えないようTNR活動を重視している。(※TNR活動:Trap:野良猫を捕獲すること。Neuter :不妊手術をすること。Return:元の生活場所に戻すこと。)

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実際に施設が行っている譲渡会は仔犬のみが対象で、年齢制限(20~60歳)や一人暮らし不可という条件もある。安易な飼育が原因の殺処分を減らすため、譲渡には厳しい審査がある。
殺処分をなくすための啓発運動は、茨城県内のお祭りやイベントでブースを設けたり、小学生向けの「ふれあい教室」、中学生向けの「いのちの教室」など開催したりと多くの取り組みを行っている。
     
夏休みには、「親子見学会」や「一般見学会」と題しセンターのほぼすべてを一般公開して殺処分について学ぶ機会がある。普段職員しか入れない場所は一般公開しない、という自治体もある中で茨城県指導センターがこのような日を設けるのは、県民と情報を共有し、共に現状を改善したいという職員の方々の思いがあるからだろう、と感じた。

このセンターが訴えていることは、
・安易に飼わない!
・生まれてから困るより、不妊去勢手術を。
・犬の散歩はリードを付けて。
・猫は室内で飼う。
・ペット所有者明示(鑑札・名札等)をする。
・動物の遺棄および虐待は犯罪。

殺処分数が犬・猫ともに年間2,000匹を越える茨城県。(平成25年度 環境省調べ)
一般的に、私たちは全国の殺処分数の統計や「殺処分数ランキング」を見て、数だけでその県を判断してしまう事がある。しかし、本来動物愛護とは数による「順位」ではなく、一匹でも殺処分しなければならないという現状に市民が気付き、考えるべきことであるように思う。
     
センターでは愛護活動に意識的・精力的に取り組んでいる様子。処分数も年々減少している。森島さんの一言、「私たちも思うんです。こんなに可愛い子たちが、なんで?って。」が、すごく印象的だった。
     
考える材料をたくさんいただいた、とても有意義な訪問だった。