日本でどれだけの犬や猫が、
どのように殺処分されているのか。
とても胸の傷むことばかりですが、
小さな命を守る一歩を踏み出すために
現状をご紹介します。
まずは、知ることが大切です。

By Pawer. (www.pawer.jp) (4)

毎年5万5千匹以上が息絶える

環境省が把握しているだけで毎年約56,000匹の犬や猫が、収容所である自治体の保健所や動物愛護センターなど(以下、”自治体”)で殺処分されています。(平成28年度環境省調べ)
2009~2014年の6年間では約100万匹。殺処分のほとんどは、二酸化炭素ガスによる殺処分=窒息死です。収容された犬・猫たちは、皮肉にも「ドリームボックス」と名付けられた狭い鉄の部屋で10~15分間もがき苦しみ、息絶えます。ドリームボックスを稼働させたりその後死亡確認をする業務には、職員や獣医師が携わります。動物を助けるために獣医師になっても、「殺処分」が業務である限りやらなければなりません。そのため職員や獣医師への精神的負担も大きな課題です。

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殺処分の8割以上が<猫>

2016年に殺処分された猫45,574匹の内、約65%は生後間もない仔猫でした。その理由は後ほど記載しますが、乳飲み子は病気になりやすく、ミルクや排泄など手間もかかります。そのため自治体で世話をすることは難しく、収容されると原則”即日殺処分”とする自治体も少なくありません。子猫の場合は注射で安楽死させる自治体もあります。二酸化炭素ガスの場合は、犬も猫も生後間もないと息が浅いため、ガスの濃度を上げないと規定時間内に死にきれず、生きたまま焼却炉で焼かれることもあります。

犬引き取り内訳

現状は、犬と猫で大きく異なる

なぜ、毎年たくさんの犬や猫たちが殺処分されるのでしょうか。上記の「殺処分数の8割以上が猫」ということを頭において、まずはPawer.が考える、犬や猫が自治体に行き着く3つのルートをご説明します。
     
①飼い主が飼育放棄または殺処分を希望して持ち込む:
2013年に改正動物愛護管理法が施行されて以降、自治体は犬・猫の所有者(飼い主やペット販売業者)による引き取りの申し出を拒否できるようになりました。自治体では、終生飼養を促したり飼い主自身が里親をさがすよう指導したりする例も増え、現在はやむを得ない場合に限り引き取ります。それでも2016年には、15,724匹の犬や猫たちが飼い主により持ち込まれました。

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②自治体の職員が捕獲する:
犬の場合は狂犬病予防法があり、野良犬であれば飼い主がわからない、もしくは狂犬病予防注射を受けていないとされる場合、行政が捕獲し検査をするように定められています。そのため自治体で収容される所有者不明の犬の8割以上が成犬です。(環境省「平成28年度引き取り内訳」より)収容されると、職員がマイクロチップの有無をリーダーと呼ばれる機械で確認します。
      
マイクロチップとは、飼い主の情報を登録し動物の体内に埋め込む12ミリほどの個体識別装置です。リーダーで飼い主の情報が得られれば職員が連絡します。ところがマイクロチップは未だ認知度が低く、見つかっても中の情報が空であったりデータの更新がされていないケースも少なくありません。
           
一方、猫を対象としたそのような法律はなく、自治体に捕獲義務はありません。ただし、負傷猫や「自力で生きられない」と判断された乳飲み子は捕獲されます。そのため、仔猫は所有者不明猫の7割以上を占めます。(環境省「平成28年度引き取り内訳」より)
           

猫引き取り内訳

③一般の人が拾った犬や猫を連れて来る:
一般の人が、拾った所有者不明の犬や猫を自治体に持ち込んだ場合、犬は狂犬病予防法があるため引き取られます。上記②のケース同様、マイクロチップを確認し、飼い主がわからない場合は自治体のホームページで迷子の情報を公開します。
数日の公示期間中に飼い主からの連絡がなければ、
(1)譲渡に向くと判断されれば里親を募集し、
(2)何らかの理由で譲渡に向かない、または譲渡に向いても収容スペースがない場合は殺処分されます。
     
成猫も収容されれば迷子情報が公表されます。目も開いていないような乳飲み子の場合は収容されても殺処分の対象になることが多いため、持ち込んだ方が里親を捜すよう指導する自治体や、「自力で生きられない」と判断し引き取る自治体もあります。

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猫(所有者不明)の収容数が多い理由

猫は交尾排卵動物(交尾の刺激で排卵するしくみの動物)であるため妊娠率が99%と高く、親・子関係なく近親交配する生き物です。メス猫は一年に2-3回出産することができ、一度に約4-6匹出産します。さらに生後約半年から子供を産めるため、理論的にはわずか1年で、妊娠しているメス1匹から50匹以上に増えます。
     
このように外で繁殖し増えすぎた子猫たちが、殺処分の半数以上を占めているのが現状です。改善するには猫の全体数をコントロールする必要があり、不妊去勢手術を施し事前に繁殖を防ぐことが、現実的かつ確実な方法の一つです。

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不妊去勢手術を20年以上続けているアメリカの獣医ジェフ・ヤング氏によると、これらの過剰繁殖を人間の許容範囲に抑えるには、全体の約90%を不妊去勢手術しなければなりません。(2016年国際動物福祉会議ICAWCでの発言より)
     
自治体に収容される野犬や野良猫を減らすには、不妊去勢手術の認知度を高め、普及・継続させる必要があります。完全室内飼いとして飼育している場合でも、万が一脱走した際に外で繁殖しないよう、飼い犬や飼い猫の手術を検討することは大切です。しかし、すでに野外で生活・繁殖する犬や猫は捕獲が難しく、過去から現在に続く「飼い主の飼育放棄」も、野良犬や野良猫が絶えない原因の一つです。
     
飼い主が飼育放棄する理由として、次のようなものが挙げられます。
飼い主の都合(引っ越しや介護など家庭環境の変化、身寄りのない飼い主の高齢化、経済面の問題、犬の成長や習性に対する不満、流行りの犬種に買い替える、など)
脱走(管理していない、脱走防止策を怠る、逃げても探さない、探し方を知らない、など)
多頭飼育崩壊(不妊去勢手術をしていない複数頭を飼育するうちに増えて手に負えなくなる、繁殖に関する知識のない個人が販売目的で繁殖させた結果管理できなくなる、など)
やむを得ない事情(災害時に逃げ出した場合など)

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各地の取り組み

不妊去勢手術の必要性が全国で広まる前から、一部の自治体や、公益財団法人、民間団体、個人の保護活動家たちが、各地域に住み着いた野良猫の管理や手術を続けてきました。その代表的な活動は、地域猫活動とTNR活動です。
     
地域猫活動
地域住民の理解と協力を得て、特定の地域に住み着いた野良猫の不妊去勢手術、糞尿の後始末、餌やりなどの管理をしながら、”地域猫”として一代限りの命を全うさせる活動を、地域猫活動といいます。また、野良猫の不妊去勢手術のみを行う活動をTNR(ティー・エヌ・アール)活動と呼びます。地域によって定義や規制が異なり、行政への届け出が必要な場合もあります。例えば、京都市では地域猫活動を「まちねこ活動」と呼び、届け出が認可されれば、行政が無料で不妊去勢手術を行います。(京都動物愛護センター職員より)
     
TNR活動
野良猫の過剰繁殖を事前に防ぐために、捕獲し、手術して、元の場所に戻すことを、その頭文字をとってTNR活動と呼びます。
T:Trap(捕獲)
N:Neuter(不妊手術)
R:Return(元へ戻す)

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耳カットについて
不妊去勢手術を施した猫は、印として耳をV字にカットします。特にメスは手術した跡がわかりにくく、二度同じ猫を手術したり捕獲したりしないための目印とされています。耳をカットされた猫は、その形が桜の花びらに似ていることから「さくらねこ」と呼ばれ、京都では「まちねこ」と呼ばれています。
     
大きなV字の耳カットは日本で普及していますが、韓国や、動物福祉先進国であるイギリス、アメリカ、またそれらの支援でTNR活動をしているマルタなどの国々では、V字ではなく直線にカットする方法が多く採用されています。27年間、25ヵ国で猫のTNRに携わった専門家のIan MacFarlaineは、直線は自然界では作れない形であることから、より確実に見分けるために直線のカットを勧めています。

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殺処分数が減っても残る課題

このページでは、殺処分の方法や内訳、犬と猫の現状の違い、現状改善に向けた取り組みなどをご紹介しました。近年の殺処分数を見ると、2009年から2014年の6年間で減少した殺処分数は、1年あたりの平均が25,699匹(合計128,494匹)です。今後も毎年同じ割合で減り続ければ、いつかは殺処分ゼロを達成できるはずです。
     
しかし飼い主の身勝手な飼育放棄や、野良犬・野良猫の過剰繁殖が続く限り、殺処分ゼロにはなりません。元をたどれば、外で暮らしている犬や猫も全て捨てられたり逃げ出した元飼い犬、飼い猫たちや、その子孫です。
そして忘れてはならないのは、安易な飼育を促すペット販売のあり方や、ペット産業自体の改善です。販売目的で利用・生産される犬や猫、そしてその流通過程で死亡する子犬や子猫は後を絶ちません。(このホームページの<ペットショップという存在>では、ペット産業についてさらに詳しく記載しています)
     
本当の意味で犬や猫にとっても、人にとっても、住みよい社会をつくるためには、犬や猫を飼う・迎える側が、店頭やインターネットで命の衝動買いを促すような社会の仕組みについて知り、終生飼養という当たり前の責任を自覚すること。そして万が一、飼えなくなった場合でも次の飼い主へ命を繋げられるよう、保護動物を受け入れると言う選択肢を知ることが大切です。

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保護された後の生活
「殺処分ゼロ」や殺処分を減らすことは、目的ではなく通過点です。殺処分制度がなくなっても、収容される犬や猫たちは後を絶たず、必ずしも幸せな環境にいるとは限りません。
     
民間保護施設では、一匹でも多く助けるため、少し無理をしてでも保護するところが少なくありません。その結果、里親に引き取られるまでの間、スタッフ不足が原因で十分に愛情を注いでもらえなかったり、散歩に行けず適度な運動量が得られなかったりと、本来望ましくない環境で暮らすことを強いられます。それでもスタッフの方々は、殺処分されるはずだった犬や猫たちに「二度と同じ思いはさせない」という気持ちで、一匹でも多くが譲渡されるよう日々世話をしています。
     
動物愛護後進国とさえ言われる日本の課題は、殺処分数を減らすことはもちろんですが、安易な購入をなくし終生飼養を徹底したり、ペット産業の改善、過剰繁殖の防止など、動物の生きる権利を守り、個々が終生幸せに暮らせる環境を確保することではないでしょうか。それは動物のためだけでなく、思いやりのある社会を目指す私たち自身のためでもあると思います。