2016年8月から2017年7月までの1年間、犬と猫のフリーペーパー「瞳としっぽ」で連載を担当しました。ここでは、5ヵ国で取材したアニマルシェルターに関するコラムをご紹介します。

【アメリカ】

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サンタ・ポーラ・アニマル・レスキュー・センター
現地スタッフと車で向かい田舎町の住宅街で見つけたのは、古http://pawer.jp/?page_id=9220&preview=trueい動物病院を改装した施設。カリフォルニア州サンタポーラ市にある、サンタ・ポーラ・アニマル・レスキュー・センター。2012年6月に、同郡では初めてとなるノーキルシェルターとしてオープンした。ここに来るのは市内で見つかったり飼い主により持ち込まれたりした犬や猫たち。8月現在、約70匹の犬と60匹の猫が保護されている。スタッフ30名と多くのボランティアが日々の世話をする。
理事長のニッキーに施設を案内してもらう。シェルターとしては珍しく音楽がかかっている。屋外から準備室を覗くと、犬におやつを作るスタッフの姿。よく見るとそこにはピーナッツバターが。「これをおもちゃに塗ると喜ぶの」と笑顔で話してくれた。犬舎を見学し「ここが最後よ」と言われて向かったのは、ケージが敷詰められた大きな倉庫。街中は騒音規制が厳しく、夜間はここで犬を保管しなければならないと知らされる。

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取材中、皮膚病の犬が遊んでいるのを目にした。日光を浴び過ぎないよう配慮し外に出す時間を調整しているそう。日本では、公示期間が過ぎれば健康な犬や猫も殺処分される。ここアメリカでも病気や障害があれば多くの施設では安楽死の対象になりかねないが、ここでは「生」を選ぶ。「去年トラックにはねられたボクサーが来たの」とニッキーが話す。2ヶ月間に及ぶ大腿骨などの手術費用は約200万円。寄付などで賄った。「私は過去に2度、半身不随で歩けないと診断された犬たちの奇跡的な回復を見て来たわ。だから何があっても諦めないの」。事故に遭ったボクサーは、現在里親の元で幸せに暮らしている。小さな命をつなぎたい。その思いが、大きな世界をつなぐ。
◆施設ホームページ:http://www.santapaulaarc.org/

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ベンチュラ・カウンティー・アニマル・サービシーズ
カリフォルニア州、ベンチュラ郡。飛行場の隣にある保護動物収容施設、ベンチュラ・カウンティー・アニマル・サービシーズを訪ねた。同郡の面積は京都府より少し広い。ここには、毎日約30匹の動物がエリア全体からやってくる。犬、猫、うさぎ、鳥、馬・・・それぞれ保護されたり、捨てられたりした命。6月には収容数が600頭に上った。「安易な飼育」が引き起こす問題を社会が抱えているという現実は、国境を越えても同じ。ただここは、ノーキル(特例を除き、殺処分をしない)シェルターである。

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獣医師やスタッフ以外に飼育指導係などの専門家が在籍。登録ボランティアは約600名。そしてポイントはマーケティングマネージャー。彼が他の団体や施設と連携し、収容動物の情報を社会に発信する。驚いたのは時間優先でムダのないシステム。日本の自治体で犬や猫が保護された場合、写真を含む公示には時間がかかるが、ここでは野良犬や猫が到着すると、すぐに撮影する。一刻も早く飼い主を探すためだ。画像は30分以内に20もの動物関連ホームページに送信される。その間に、施設のソーシャルネットワークでも情報を発信。閲覧者である一般人も協力し、より多くの人に情報を伝える。効果は絶大。猫は50%の返還率を誇る。(日本は成猫の返還率が1.8%。※2014年度環境省調べ)施設の近くで働く会社員は、昼休みを使いボランティアで犬の散歩をしていた。「自分の健康のために始めた」という。いつでも、一人でも、誰とでも、出来そうなことから、無理のない範囲で始める。それが大きな一歩です。
◆施設ホームページ:http://www.vcas.us

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シェルターホープペットショップ
カリフォルニア州サウザンドオークス市。5年前ショッピングモール内にオープンしたシェルターホープペットショップの代表キムさんを訪ねた。ここは日本で知られている一般的なペットショップとは大いに違う。まず、キムさんが取り扱うのは全て保護された小型犬。そして営業時間外は、フォスターという「一時的な飼い主」がそれぞれの世話をする。店ではグッズ販売も行っているが、店内の売り物は贈与されたものばかり。敢えて「一般的なペットショップ」の印象を打ち出すことで、何も知らず来店する客に保護犬の存在を広めているのだ。「きっかけは、時間を有効利用したいという気持ち」だったと話すキムさんは、7年前まで専業主婦。「自由な時間を好きな動物を救うために使おう」と思い立った。それから一年間、仲間と共にプロテストを行った。様々なペットショップの前でプラカードを持ち、販売されている仔犬が「パピーミル(繁殖工場)」から来たことを訴え続けた。

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活動はメディアに取り上げられ、後に有名なドッグトレーナーの番組にパピーミルの実態調査隊員として出演。その経験をもとに、「保護した犬たちを救うためのペットショップ」という新たなビジネスモデルを生み出した。ショッピングモールに場所を提供してもらう代わりに、モール全体の来店客を増やす。出店は狙い通りの結果を出し、わずか1年3ヶ月で4店舗を展開した。キムさんは言う。「目指すゴールは、私自身の廃業よ。保護を必要とする動物がいなくなること。ペットショップで仔犬を買う人の中には現状を知らない人も多い。殺処分やパピーミルから目を背けたいかもしれないけれど1人でも多くが事実を知ることで助かる命がたくさんある」。
◆施設ホームページ:http://www.shelterhopepetshop.org/index.php

【イギリス】

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ドッグズトラスト
青い空に大きな雲が浮かぶ。目の前には広大な敷地が広がり、噴水の音が聞こえる。イギリス最大の犬の非営利団体ドッグズトラストが運営するリホーミングセンター。国内に20以上の施設があり、今回はロンドンに一番近いセンターを訪ねた。敷地内には犬舎以外にカフェやトレーニングルームがあり、地域の人たちが犬を連れてランチを楽しむ姿も多く見られた。施設を案内してくれたのは職員のエマさん。ここでは約100匹の犬に対し、獣医師や訓練士を含む30名ほどのスタッフが勤務している。一通り話が終わると「今から犬の説明をするわね」と、20枚ほどの記録表を取り出した。ここでは収容される犬1匹1匹の特徴や収容一週目の行動などを細かく観察し、全て記録に残すのだという。それを見ると、犬も人と同じ唯一無二の存在である事がよくわかる。

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記録内容は犬種などの基本情報以外に性格や癖、他の動物との相性や車酔いの有無など多岐に渡り、記録用紙は3種類に分けられる。持ち込んだ飼い主がいる場合、慣れない環境への反応や懐いている度合いなどを記録する「事前評価」。しつけレベルや犬が感じているストレスなどについて見極める「福祉評価」。そして「第一週評価」にはシェルターに来た日から7日間の様子、スタッフや獣医師への反応、玩具への興味、散歩中の振る舞いなどを記録する。これら93項目を5〜9段階で評価し、それが終わると最終評価と共に個別ファイルが完成する。訓練士はこれを元にそれぞれに必要なトレーニングを分析。その後相性の良い飼い主を探す上でも貴重な資料となる。時間と人手が必要な作業だが、同じ犬が二度とシェルターに戻る事がないように。大切にしてくれる里親を見つけるためには、まずそれぞれの犬を良く知る必要があるという。
◆施設ホームページ:https://www.dogstrust.org.uk/

【ドイツ】

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ティアハイムベルリン
ドイツ、ベルリン。都市の中心部から電車とバスを乗り継ぐこと1時間。そこにヨーロッパ最大級の動物収容施設ティアハイムベルリンがあった。広さはサッカーグラウンド22個分。月に一度のボランティアによる案内ツアーは、所要「2時間」と紹介された。一体どんな施設なのか。ドイツには各地域にティアハイムという動物収容施設がある。中でも建築士Dietrich Bangertによりデザインされ、円形の犬舎や敷地内の池など保護施設とは思えない外観に圧倒されるのがベルリン施設。年間約9億3千万円の運営費や、施設の建設費などは寄付や年会費のみで賄われている。ここには犬や猫の他に、鳥類、げっ歯類、爬虫類、猿、豚や山羊などの家畜も保護されている。引き取られる数が年間8000〜1万頭に及ぶと知り、施設の大きさに納得した。

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常に1400〜1800頭を飼育するこの巨大な施設。訪問時は人の少ない印象を受けたが、約150名の常勤スタッフと多くのボランティアが支えているらしい。中には、人に対してトラウマのある猫に寄り添い、時間をかけて信頼を取り戻す活動を続ける(キャット・ウィスパラーと呼ばれる)人もいると聞いた。ここに来る動物それぞれにいきさつはあるが、夏のホリデーシーズンに捨てられるケースが圧倒的に多いと聞かされた。長期の旅行に連れて行けない、世話をする人がいない・・・そんな身勝手な理由で捨てられるペットは、ドイツでも後を絶たない。ただ、ここでは施設に引き取られる数と同じくらいの里親が見つかるそうだ。寄付する人、ボランティアをする人、命を迎える人、そしてその現状を伝える人。それぞれが自分に出来ることを実践することで、社会全体として命を守る。日本の状況はドイツとかなり違うけれど、一人ひとりに出来ることはあると思う。
◆施設ホームページ:https://tierschutz-berlin.de/

【キプロス】

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【ポーランド】

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