ペットが欲しいと思った時、日本ではまずペットショップを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
一度、考えてみてください。
ペットショップの店頭には、常に生後数ヶ月の犬や猫が展示されています。この仔犬や仔猫たちはいったいどこから来て、売れ残るとどこへ行くのでしょうか。
朝日新聞記事(2018/01/31のSippo記事”毎年80万匹前後の犬猫が流通 2万4千匹は流通過程で死ぬ”)によると、2016年度に国内で販売(または引き渡し)された犬は663,220匹、猫は165,859匹でした。これら約83万匹のうち、24,243匹は流通過程で死亡しています。それでも、1日に子犬が1,817匹、そして子猫が454匹販売(または引き渡し)されている計算です。一方で、全国の自治体では毎日(平日)約230匹の犬や猫が殺処分されています。もし保護施設から犬や猫を譲り受ける里親の割合が増えれば、殺処分する必要がなくなり多くの命が救われて、同時に、処分に使われる年間億単位の税金も他に有効活用できます。里親を必要としている犬や猫をペットとして選ぶことで、たくさんの命が救われ、地域のくらしを豊かにするためのチャンスも生まれます。
自治体で収容された猫の約70%は仔猫
日本人は犬や猫を飼う場合、成犬や成猫にくらべて生後間もない仔犬や仔猫を好む傾向にあります。「自治体の保健所や動物愛護センターには成犬・成猫しかいないのでは?」というイメージをお持ちの方も多いと思います。ところが実際は、自治体に収容された犬の17%(6,944匹)が仔犬で、猫は約70%(約50,132匹)が仔猫でした。(環境省の「平成28年度犬猫引き取り数内訳」より)
どうしても幼齢から飼いたいと言う方でも、こんなにたくさんの仔犬や仔猫たちがいれば、きっと運命の出会いがあると思います。
仔犬や仔猫を希望する理由として、「成熟した犬や猫ではなつかないのでは?」と思われる方も多いかもしれません。確かに、虐待など過去の経験からトラウマを抱えている犬や猫には飼い主の配慮が必要です。しかし時間をかけてたっぷりと愛情を注げば、犬や猫も飼い主に愛情を返します。
そして成熟した犬・猫を保護施設から譲り受ける上で、大きなメリットがあります。
①施設が健康状態を把握し、ワクチンも済んでいる
②性格や癖がわかっているため、住居や生活スタイルに合う犬や猫が見つかりやすい
③飼い始めた後でも、困ったことがあれば施設のスタッフに相談できる
また幼齢の時期は環境に影響されやすく、健康状態や性格などの把握が困難な場合があります。販売を最優先に考えるような悪徳ペットショップでは、不健康であることを表記せず販売した事例もあります。
ほとんどの保護施設では譲渡に条件があり、本当にその犬や猫が飼い主のライフスタイルや家庭の環境に合っているかどうか、性格や大きさなども含め審査します。こうした事前の審査が、飼ったあとの問題を防ぎ、初めて飼う方でも安心できます。譲る側も「終生大事に飼ってもらいたい」という思いがあれば、当たり前のことかもしれません。里親になった後も気軽に相談できるような施設で管理されているなら、安心して譲り受けられるのではないでしょうか。
動物福祉先進国であるヨーロッパやアメリカでは、犬や猫は保護施設から譲り受けたり、ブリーダーから購入するのが一般的です。生体販売や殺処分制度自体を廃止した国もあり、捨てられたり事情があって施設に持ち込まれたりした健康的な犬や猫の多くに、新たな飼い主と出会うセカンドチャンスが与えられます。しかし近年、これらの国でも、インターネット上での販売が増加しています。特にヨーロッパでは近隣国から密輸入するなど、安易な購入や飼育放棄も後を絶ちません。保護施設が充実し、マイクロチップも普及する中で、さらに規制を強め対応しています。
どうすれば日本も動物福祉に取り組む国になれるのでしょうか。まずは一人ひとりが現状を知り、無理のない範囲で、できることからやってみる。その動物を思いやる気持ちが、動物福祉への最初の一歩だと思います。
当ホームページの<ペットショップという存在>では、日本のペット産業についてお話します。Pawer.がご紹介するのは実態のごく一部ですが、少しでも知ることで、改めて「買わずに飼う」という選択肢について考えて頂ければと思います。