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日本では馴染みのある、「ペットショップ」。

いくつも並ぶショーケースの中にかわいい仔犬や仔猫が一匹ずつ入っていたり、大きなケースに数匹入っていたり。ペットショップでは、いつ来店しても生後数ヶ月の仔犬や仔猫が販売されています。全てのお店で全ての仔犬や仔猫が成長し大きくなる前に完売するとは考えにくいですが、なぜ幼齢の犬や猫を展示販売し続けることができるのでしょうか。
     
近年、約一兆五千億円産業ともいわれるペットビジネス。その内容はペットフード、ペット医療、ペット用品、ペット販売、ペット向けサービスと様々で、生体販売は960億円にも上ります。(大宮国際動物専門学校「動物業界のマーケットサイズ」より)
生体販売に関わる業者は、「パピーミル(仔犬繁殖工場)」や「ブリーダー」などの繁殖業者、生体販売店のバイヤーなどが仔犬や仔猫を繁殖業者から買うためのオークションや競りを開く卸業者、ペットショップなどの小売業者、売れ残った犬や猫を処分する処分業者(通称”引き取り屋”)などが挙げられます。

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現在はインターネットを通じてペットが販売されるケースも少なくありません。
     
毎年55,998匹以上の犬や猫たちが殺処分されている日本ですが(環境省平成28年度調べ)、一般の人たちによる大量消費が見込めるため、現在も大量生産されています。繁殖場から卸業者、そして販売店へ。流通経路は様々ですが、長時間箱に入れられて空輸や陸送で運ばれたり、モノのように扱われたりすることが強いストレスになることは言うまでもありません。朝日新聞が2014年から始めた自治体を対象とした調査によると、”国内の犬猫の流通量は毎年80万匹前後、繁殖から流通・小売りまでの間に死ぬ犬猫が毎年約2万4千匹いることがわかった”そうです。(2018年1月31日のSippo記事「毎年80万匹前後の犬猫が流通 2万4千匹は流通過程で死ぬ」より)

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日本人は小さな生体(仔犬や仔猫)や流行りの犬種を好む傾向があるため、パピーミル(仔犬繁殖工場)では交配に若過ぎる雌犬をも利用し、次々と仔犬を産ませまることになりがちです。仔犬たちは生後一ヶ月ほどで母犬や兄弟から離され競りにかけられたりしてペット販売店に並びます。
日本では、お金を出せば気軽にペットを買えます。店頭での生体販売や犬・猫の飼育についても法律で厳しく管理されていません。
           
繁殖工場では経費削減のため近親交配も行われていることも考えられ、その結果として身体の弱い仔犬たちが産まれやすくなります。
また、早い時期に母犬や兄弟から離すことで、社会性も学べず、無駄吠えや噛み癖のある犬に育つ可能性が高くなります。

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そんなことを知る機会もなく、多くの方々はショーケースの犬が「かわいい」という理由で購入しているのではないでしょうか。
           
中には、誕生日やクリスマスの「プレゼント」として衝動買いする方もいるようです。ペットショップの中でも、動物をモノとして扱い、単なるお金儲けの道具として利用して利益だけを追求するような悪徳業者は、売ることだけが目的です。そのため、飼育に適した家庭かどうかなど厳しい審査はほとんどしていないのではないかと思われます。その結果、ペット禁止住居での飼育が見つかって飼えなくなるケースも多く、もともと身体が弱く、吠え・噛み癖のある犬はきちんとしたしつけを怠ると手に負えなくなるなど、飼い主の身勝手な理由で、毎年たくさんの犬や猫たちが捨てられています。
           
犬や猫もそれぞれ個性がありますが、種類によって習性や性格も違います。例えばダックスフントには、「よく吠える」「穴を掘る(いたずら好き)」という特徴があります。歴史を遡るとダックスフントはドイツで狩猟用に作られ、穴を掘って獲物を発見したり捕まえたりしたことを主人に伝えるため大きな声で吠えるよう改良されました。

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日本では一般的に、犬や猫をペットとして飼います。利益目的ではなく動物のことを考えて販売するペットショップでは、ダックスフントのような特徴的習性、購入希望者とペットの相性、住まいにふさわしい種類かどうかなどを話し合うところもあります。販売店が「売る前」にさまざまな情報を提供することで、飼い主が「買った後」のトラブル(「想像と違った」など)を防ぎます。人と人の信頼も生まれ、「売って終わり」ではなく、購入したあとも気軽に相談できるのが理想的ではないでしょうか。それは今まで世話をして可愛がった動物を「最後まで大切に飼ってもらいたい」と思う販売店であれば、ごく自然なことでしょう。

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環境省は動物取扱業者を選ぶときのポイントとして、以下の項目を挙げています。
これらはペット販売店が最低限守らなければならないことです。
           
① 広告は適切に行われているか
➢ 環境省に登録している業者の広告には、登録番号、動物取扱責任者、動物取扱業の種別などが記載されている
② 店内に登録番号が記入された標識を提示しているか
➢ 登録を受けている業者は、登録番号や営業の種類、登録期限などを記した標識を店内に提示している
③ スタッフは名札(識別票)をつけているか
➢ スタッフは登録番号や営業の登録期限などを記した名札(識別票)をつける
④ 購入する前に買い方や健康状態などの説明があるか
➢ 販売者は販売する前に購入者に対して動物の健康状態やワクチン接種の有無、飼い方、標準体重や体長などの説明をしなければならない
⑤ 生後45日以内の犬や猫が売られていないか(平成28年8月31日以降は56日を経過しない場合は販売禁止)
➢ 仔犬や仔猫は、生後一定期間は親兄弟と一緒に過ごさないと吠え癖や咬み癖などが強まったり攻撃的になったりするなどの問題行動を起こす可能性が高まるので、離してはいけない
⑥ ケージが狭すぎたり明るすぎたりしないか
➢ 動物が立ったり寝たりするのに十分な空間を確保し、過度の苦痛を与えないよう照明や音に配慮しなくてはならない
⑦ 排泄物などで施設が汚れたり悪臭がしたりしていないか
➢ 業者は、排泄物を適切に処理し、施設を常に清潔に保って悪臭や害虫の発生を防ぐなど周囲環境にも配慮しなければならない

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悪徳ペットショップや悪徳ブリーダーは「悪徳業者」の看板を掲げているわけでも、名札を付けているわけでもありません。そこで販売されている動物が本当にひとつの命として扱われているかどうかは、「可愛いでしょう」と購入をすすめるその人と話をすれば分かるはずです。仔犬や仔猫をモノのように扱う悪徳業者は、売れれば次々に生産します。そのような悪徳業者から動物を買うことは、結果として悪徳業者を助け、かわいそうな動物たちを作ることにつながります。
           
可愛い仔犬や仔猫たちがショーケースに並ぶその前に、一体どこでどのように扱われて来たのか。一度、考えてみて下さい。